美由は・・・亜矢が羨ましかった。
そして、大好きだった。世界で一番・・・大好きだった。
――・・・・あれは、私が中学を卒業してすぐの頃。
めでたく同じ高校へ入学することができた私達。
入学祝にお互いにパソコンを買ってもらい、メール交換が出来るようになった。
同じ学校でも、クラスは遠いので相手がどんな風にすごしているのか
全然わからなかった。そのため、メールのやり取りはすごくたのしかった。
毎日、毎日亜矢から来るメールは一日も欠かさず届いた。
私とは違ってマメな亜矢はどんなに忙しくても、私へのメールと勉強だけはわすれない。
だからすごく成績もいい。友達からも好かれていた。
そんな亜矢と仲良くなれて本当によかったとおもう。亜矢はすこしキツイところはあるけど
実はすっごく優しい。私が小学校のころ、遠足で転んでおいていかれた私に
声をかけて、傷口を綺麗に消毒してくれた。
亜矢とはかれこれ小学校入学の時からの付き合いだ。
今でも。変わらず仲がいい。誰もが認める最高にいい友達・・・。
・・・一通の新着メッセージ・・・
「あ・・・亜矢からきてる。」
これが結構楽しみだったりする。
毎日あっててもメールでしか話せないこともある。
その内容はホントにくだらないものだけど
私にとってはすっごく大切で。それを見るのがいつも楽しみ。
メールの内容からするとどうやら亜矢は最近勉強していないらしい。
亜矢しにしてはめずらしい。どうしたんだろ。
「貧血ぎみでダリィ〜〜」・・・か。
亜矢らしいや・・・・。
返事でも書こうかな。
私はたまにしか亜矢にはメールをださない。それでも亜矢は
毎日メールを書いてくれる。
えっと・・・
「貧血なんだ?大丈夫〜?朝礼で倒れるなよぉ〜〜(笑)........
たまにかくからすごくながくなっちゃうけど
どれもこれもくだらない内容。
でも、亜矢からきたメールを見たり、返事を書いたりしていると
明日亜矢と会えるのがすごく楽しみになる。
メールで送った内容でまた盛り上がったり。いろいろするんだ。
次の日、いつもどおりに学校へいく。
「おはよ〜〜〜♪亜矢〜♪」
「ああ、おはよ〜〜。」
いつもこんなそっけない返事の亜矢。
そして亜矢は、今日は数学の小テストで勉強していないから・・・
といって急いで自分のクラスへともどっていった。
亜矢のことだから2〜3分復習すれば90点はとれるだろう。
それに比べて私は・・・・・ホントなんにもできないやつ・・・
にぶいし。勉強も全然ダメ。亜矢とは正反対。
「おはよっ」
そうやって後ろから声をかけてきたのは永岡修一。
修一とは中学2年生の頃から私達と仲がいい。
修一はすごく優しい。私はそんな修一に惹かれていた。
だけど、修一は亜矢の彼。
中学3年生のとき、亜矢からきいてびっくりした。
「私、修のこと好きなの。」
そういわれたとき、私はつい
「協力するよ!がんばって!」
そういってしまった。だけど後悔はしていない。
だって、大好きな亜矢のためだから・・・・
今ではもう諦めているつもり。「亜矢の彼」だからね。
今では一番の男友達、として考えている・・・・
今日も放課後3人で遊びに行く約束をしている。
3人で居るときが一番楽しくて、一番スキ。
―放課後―
いつものようにいろんなお店の寄り道しながら
街を歩いていった。亜矢は修一にビーズのアクセサリーを
おねだりしたり・・・はしゃいでいた。
「ねぇねぇこれ良くない?カワイ〜!」
あ・・・かわいい。
亜矢が指差したのは小さいハートのチョーカーだった。
透き通ったピンクの小さなハート型。
ガラスでできてるのかな・・・・。
修一に買ってもらうのかな。亜矢は。
「ねぇ!美由!これオソロで買わない?」
ちょっと意外だったけど嬉しかった♪
ずっと亜矢とオソロのものほしいと思ってたんだ。
「いいよ♪買おう買おう!」
初めて買った亜矢とおそろいのハートのチョーカーは。私の宝物になった。
お店から出たとたん、私と亜矢はチョーカーを袋から出して
すぐに身に付けた。大人っぽい亜矢だけどこういうのも似合う。
「美由〜にあうじゃ〜ん♪カワイイよ。」
修一をそっちのけて私達2人はかなりはしゃいでいた。
夕方になってもう暗くなりかけた頃。そろそろ解散することになった。
「じゃあ、私もう帰るね。」
亜矢が言い出した。
そしてみんなそれぞれ家へ帰ることにした。
「バイバイ。亜矢、修一」
「あぁ、またな〜。亜矢、美由」
「バイバイ・・・修・・・美由♪」
いつものように亜矢たちと別れて、家へ向かった。
少しなんか不安になったので、振り返ってみた。
亜矢はにこにこして手を振っていた。
「またね〜〜!美由〜〜〜!!」
その言葉がなんだか変に思えた。何故だかわからないけど・・・・
夜。いつものようにメールチェックをした。
・・・新着メールなし・・・
「あれ?おかしいな・・・いつもなら届いてるはずなのに。」
つまんないなぁ・・・亜矢ったら。サボったな〜。
亜矢にしては珍しい。
明日学校いったら文句いってやろ〜っと。
―翌日―
「おはヨ〜!あれ?亜矢は?」
教室を見渡してみたが、亜矢の姿はなかった。
まだきていないらしい。
だけど誰にきいても亜矢のことは話してくれなかった。
そのとき、私の目にあるものが映った。
「!!」
亜矢の机に置かれていたのは、花瓶に挿された花だった。
「なにこれ・・・イジメ?これじゃまるで・・・・」
コレジャマルデ・・・
その先がいえなかった。不安だった。
コレジャマルデ アヤガ シンダミタイジャナイ・・・・
シンダミタイ・・・・?死んだの??
「ねぇ、亜矢どうしたの??これなに?どういうこと・・・・?」
みんな黙っていた。私と比較的仲の良かった女の子が重い口を開いた。
「昨日・・・交通事故だったみたい・・・・。亜矢さん・・・」
そういうと顔を覆って泣いてしまった。
「交通事故・・・・?死んだの・・・?亜矢が・・・・」
それ以上言葉がでてこなかった。
まさか・・・・亜矢が死ぬなんて・・・
だって昨日元気にバイバイって・・・。バイバイっていった。
じゃあアレが亜矢の最後の言葉?
悲しいよ・・・悲しすぎるよ。
亜矢の葬式・・・
棺の中で眠る亜矢。本当に眠ってるみたいだった。
亜矢は悲しくなるほど綺麗だった。
亜矢・・・大好きな亜矢。大好きだった。亜矢。
「またね・・・っていったじゃん・・・亜矢の馬鹿・・・。うそつき!!!」
またねって・・・また会おうねって意味でしょう?
もうあえないじゃん・・・。亜矢のうそつき。
家へ帰ってから・・・時差で涙がでてきた。
葬式では、涙さえでてこなかった・・・まだ何が起こったのかまったく理解できていなかった。
今ごろ泣いても遅いのかもしれない。
だけど、ただ、ただ泣いた。
そして、気休め程度にメールチェックをした。
メールなんて届いてるはず無いのに・・・。
亜矢からはもうメールは来ない・・・。
・・・メールの受信中・・・
受信しました。
―一通の新着メール―
送信者:亜矢
「―――・・・!?」
亜矢・・・・・!!